世界のテノール歌手が好んで歌うナポリターナとは
『オー・ソレ・ミオ』('O sole mio)、『帰れソレントへ』(Torna a Surriento)といった歌をご存知ですか?
ナポリターナというジャンルに分類される歌です。
いずれも「ナポリターナの王様」「ナポリターナの女王様」と呼ばれる名曲ですから、一度や二度は耳にしたことがおありでしょう。
世界のオペラ歌手、特にテノール歌手が好んで歌うナポリターナとは、いったいどのようなジャンルなのでしょうか。
まずは具体的な曲名を並べてみましょう。知っている歌がいくつかあれば、イメージがつかみやすいかもしれません。
- 『サンタ・ルチア』(Santa Lucia)
- 『忘れな草』(Non ti scordar di me)
- 『オー・ソレ・ミオ』('O sole mio)
- 『マリウ愛の言葉を』(Parlami d'amore, Mariu)
- 『夢見るフィレンツェ』(Firenze sogna)
- 『光さす窓』(Fenesta che lucive)
- 『泣かないお前』(Tu ca nun chiagne)
- 『帰れソレントへ』(Torna a Surriento)
いかがですか? ナポリターナの代表的な曲ばかり並べてみました。
ナポリターナは本来、その名のとおりナポリ方言で歌われます。
たとえば、『帰れソレントへ』の出だしは、標準イタリア語では「Guarda...」ですが、ナポリ方言では「Vide...」であり、こちらが本来の歌詞です。
テノール齋藤も、もっぱらナポリ方言の歌詞で歌います。
もう一つ例を挙げましょう。『オー・ソレ・ミオ』の歌詞の中で(曲名でもありますが)、「'o sole mio」は標準イタリア語では「il sole
mio」になります。
音のずいぶん印象が違いますね。
●「ナポリ民謡」という訳語について
ナポリターナは、和訳で「ナポリ民謡」とされることがあります。
日本語で民謡というと、邦楽の専門家が唄うものだったり、各地ののど自慢大会で披露されるものだったりというイメージがあって、国民全体で共有しているジャンルではないかもしれません。
少なくとも、誰かが民謡を歌い出すとその場で大合唱になる、なんてことはまずありませんよね。
しかし、ナポリターナは、一流のテノール歌手が好んで歌うことからもわかるように、どちらかというとクラシック系に分類され、しかも全国民で大事にしている歌曲であって、人が集まっている場で誰かが歌い出すと、いつしか大合唱になることもめずらしくありません。
音楽に関する文化レベルの高さ、深さを見せつけられる瞬間です。
●一番のオススメは「ジュゼッペ・ディ・ステファノ」
ナポリターナを歌った歌手は大勢います。
歴代の「四大テノール」「三大テノール」などと呼ばれた名歌手たちは、誰もがすばらしい歌唱を聴かせています。
中でも一番のオススメは、なんといっても「ジュゼッペ・ディ・ステファノ」。
明るく広がるイタリアの空を思わせる伸びやかな声。
こもることなく、あくまでも前へ前へと出て行く声。
うなって押し出した声ではなく、声が勝手に飛び出してきて、自由に広がっていく。
一聴の価値があります。
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