母音別、子音別のボイストレーニング
一つ一つの音を美しくする本格的ボイストレーニング
発声は、身体を楽器にした「演奏」です。
良い音で弾ける、つまり良い声で話せるようになるためには、母音別および子音別のボイストレーニングも必要です。
ここにこそ言語学者としてのテノール齋藤の強みがあります。
「もっと明るく」「はっきり」「元気よく」のような感覚的な表現ではなく、言葉の専門家として各音の特性を言語学的に分析し、魅力的な発話に適した発音を科学的に指導できるからです。
たとえば日本語に5つある母音を音声学的に見て、それぞれの相互関係に気をつけながら魅力的かつ心地よい発声をするには、どうしたらいいのか。
「おはようございます」という言葉を発音する場合、声が凸凹しやすいのはどこか。
文末に近づくにつれて声が「落ちる」のを防ぐにはどうしたらいいか。
「ございます」の「ざい」の部分を母音のみに注目すると「あい」で、この連続はナポリターナ『カタリ・カタリ』の出だし「カタリ」に含まれているが、ここを無造作に発音するとちぐはぐな子どもっぽい印象になるのはなぜか(ボイストレーニングで教えているのは大人にふさわしい成熟した声)。
厳密にいえば、「あい」の連続のときの「い」と、「おい」の「い」は、音が違います。
これを「どっちも同じ“い”だろう」と無造作に発音すると、子どもっぽい凸凹した挨拶になってしまう。
大人にふさわしい発音は、そんな単純なものではないのです。
●ボイストレーニングでは早口言葉はやりません
こんな質問もいただきました。
「ボイストレーニングでは、早口言葉をやるんですか? 以前に話し方教室やボイトレ教室に通ったことがあるのですが、必ず早口言葉みたいな発声練習ばかりやらされて、でもちっとも効果が感じられなかったので、どうなのかなと思って質問させていただきました。失礼を申し上げていたらすみません」
失礼なんてちっともありませんから、ご心配なく。また、ボイストレーニングは本来、早口言葉など一切やりませんから、その点もご心配なく。
なぜ早口言葉をやらないかというと、「声そのものを魅力的にする」ことがボイストレーニングの目的だからです。
声を良くすることで、その人の魅力を高めます。
「早口でしゃべれないから困っている」という人は、ほとんどいません。早口でしゃべれるかどうかは、魅力的な話し方とはまったく関係ないのです。
いくら早口でしゃべれるようになっても、声そのものが良くならなかったら、よけいに「ノイズの垂れ流し」になってしまう。
だったら無口のほうがマシ――
ボイストレーニングで声そのものを良くするには、発声器官を楽器と捉え、演奏技術を身につけていくという考え方が大切です。
「速く弾ける」のではなく「良い音で弾ける」演奏を目指しましょう。
良い音で弾く技術が身につけば、速く弾いても崩れません(発声のポイントがずれない)。
しかし、良い音が出ないのに、速く弾く練習をしてしまったら(つまり早口言葉ですね)、いくら熱心にボイストレーニングをしても良い音を出す技術が身につきません。
声楽教師が「音としての声を優先して!」とくどいくらい繰り返すのは、ここに理由があります。
いくら速く弾けたところで、一つ一つの音が汚かったら、演奏として「聴けたものではない」のです。
母音や子音、一つ一つの音を美しくしていきましょう。
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